研究概要 |
1.ブラシノステロイドによる遺伝子発現誘導のマイクロアレイ解析:ヒャクニチソウ管状要素分化系におけるブラシノステロイド誘導遺伝子発現を、マイクロアレイ解析法を用いて網羅的に解析した。その結果、細胞死特異的遺伝子は一斉かつ速やかにブラシノステロイドにより発現誘導がかかることが明らかとなった。 2.細胞死特異的遺伝子の遺伝子発現制御機構の解析:システインプロテアーゼ遺伝子ZCP4を細胞死の分子マーカーとして用い、管状要素分化特異的発現を誘導するシス配列、Tracheary Element Regulating cis Element, TEREを同定した。この領域は細胞死特異的遺伝子のみならず二次細胞壁形成に関与する管状要素特異的遺伝子にも保存されており、細胞死と二次壁形成の協調の分子基盤の一つになっていると考えられた。さらにTEREに結合する転写制御因子の単離を目指した解析を行い、これに成功した。単離した因子はいずれもbZIPタイプの転写因子であった。 3.ヌクレアーゼの解析:シロイヌナズナのS1ヌクレアーゼ遺伝子全5種(BFN1-BFN5)のプロモーター解析を行った。その結果、BFN1は未成熟な管状要素特異的に発現したが、他の4種は維管束特異的発現を示さなかった。また、プログラム細胞死が予想される組織で様々なS1ヌクレアーゼ遺伝子が発現しており、各の細胞死過程で特徴的なS1ヌクレアーゼが働いている可能性が示唆された。細胞死に先立って一過的に活性が上昇するカルシウム依存性ヌクレアーゼに関連して、2種の候補遺伝子の同定に成功した。 4.核局在リパーゼの機能解析:管状要素分化特異的核局在リパーゼの発現解析と機能解析を、シロイヌナズナを用いて行った。この遺伝子は管状要素特異的な発現を示し、この遺伝子の過剰発現は維管束の異常を引き起こすことから、管状要素の細胞死過程で機能している可能性が強く示唆された。
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