本研究は植物の環境応答機構の本質を支える、環境シグナルの受容、増幅、伝達機構を、我々がラン藻において発見したcAMPシグナルカスケード系を基盤に解明することを目的とした。 1)Anabaena PCC7120においてフィトクロムの遺伝子と良く似た遺伝子を検索し、その遺伝子の破壊株を作成した。この破壊株に赤色光/近赤外光を照射して細胞内cAMPレベルの変化を観察し、光受容タンパク質を検索した。また、赤色光/遠赤色光の受容体が真にフィトクロムなのかをタンパク質の立体構造予測を基に検討した。 2)全ゲノム解析が終了したラン藻Anabaenasp.PCC7120から大腸菌のCRPおよびA-キナーゼの塩基配列を基に検索し、cAMP結合タンパク質遺伝子を見いだした。この遺伝子を大腸菌に大量発現させることにより組み換え体タンパク質を得た。このタンパク質のcAMP結合能を確認するため、ゲルモビリティシフト法を行った。また、このタンパク質のDNAとの結合、および結合部位をDNAフットプリント方により検索した。さらに、CRPにより発現調節を受ける遺伝子をマイクロアレイにより検索した。 3)ラン藻細胞からcAMPホスホジエステラーゼの精製を試みた。我々はすでに、ラン藻の粗抽出液でこの酵素の活性を測定している。そこで、何回かカラムクロマトグラフィーを繰り返すことにより、酵素を精製し、生化学的な解析を行った。また、遺伝子を単離し、その塩基配列からタンパク質の立体構造を予測した。
|