研究課題
本年度は当初の研究計画に従い、ラン藻Anabaena sp.PCC7120を実験材料として、乾燥、栄養条件等の環境条件を変えたときの細胞情報伝達系の遺伝子発現制御系について実験した。我々はこれまでにAnabaenaにおいて、トレハロースの代謝に関わる遺伝子の発現が細胞の乾燥耐性に重要であることが明らかにした。しかしながら、乾燥耐性の獲得には、乾燥ストレス時のダメージを再水和過程で修復する能力も極めて重要であると考えた。そこで再水和時の遺伝子発現について、DNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、再水和により多数の遺伝子の発現量が増加すること、特にcAMPにより活性化される転写因子ancrpBの発現が増加することを見いだした。また、ancrpB破壊株は野性株に比べ再水和時の酸素発生活性の回復が弱いことが明らかとなり、AnCrpBが乾燥からの回復過程において重要な役割を果たしていることが示唆された。さらに、AnCrpAのDNA結合配列についても検討し、大腸菌のCRPの結合配列とは異なる配列を持つことを明らかにした。ヘテロシストはラン藻における分化細胞であり、その機能は窒素固定に特化されている。そこでDNAマイクロアレイを用いて、Anabaenaにおけるヘテロシスト分化に関わる新規遺伝子の同定を試みた結果、窒素欠乏により転写産物量が増加する転写因子を7個同定した。その中で最も顕著に誘導されたnrrA遺伝子に関して機能解析を行い、nrrAはOmpR型のレスポンスレギュレーターをコードする遺伝子であることが明らかとなった。GFPを用いたnrrAの発現解析により、培地から窒素源を除いた後3時間以内にnrrAの発現量が増加し、その後ヘテロシストにおいてより強く発現することが明らかとなった。次に、nrrA遺伝子欠失変異株を作製し、ヘテロシスト分化への影響を調べたところ、変異株においてはヘテロシストの形成に遅延がみられた。変異株では、同時にhetR遺伝子の誘導が起こらなくなっており、nrrA遺伝子が分化の制御において重要な役割を果たすことが示された。
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