1.微小管重合阻害剤プロピザミドに対して高感受性を示すアラビドプシス半優性変異株(propy zamide hypersentive 1;phs1-1)を単離した。phs1-1の表現形は根で顕著であり、薬剤無添加の固い寒天上で育てたphs1-1幼植物の根はlefty変異株と同様にやや左方向に向かって伸長した。phs1-1はプロピザミドや他の微小管薬剤に対して野生型に比べ低濃度で根の伸長阻害・細胞肥大を示し、表層微小管が脱重合した。従って、PHS1は正常な微小管機能に必須であると考えられる。 2.PHS1遺伝子をmap-based法によりクローニングしたところ、新規のMKP(MAP kinase phosphatase)をコードしていた。phs1-1では64番目のアルギニンがシステインに変化していた。動物のMKP3のこの領域はMAPキナーゼ結合領域に相当し、この領域のアルギニンをアラニンに置換すると標的MAPキナーゼであるERK2との結合親和性が顕著に低下する。 3.phs1-1変異型ゲノムをアラビドプシス野生株に導入すると、微小管薬剤高感受性を示した。また、35Sプロモーターを用いて変異型PHS1^<R64C>を野生株で強制発現させると、地上部でもトライコームの分岐増加や細胞肥大などの微小管機能阻害と考えられる表現形を示した。一方、PHS1野生型ゲノムや35Sプロモーター:PHS1野生型cDNAをphs1-1変異株に導入すると一般的には変化が見られなかったが、形質転換系統の中には変異形質が軽減される系統があった。これらの結果はphs1-1変異PHS1^<R64C>がgain-of-function変異であることを示唆している。 4.PHS1遺伝子のT-DNA knockout変異系統phs1-2を取得して解析したところ、PHS1遺伝子のヌル変異株phs1-2はホモ致死であることが判明した。
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