研究概要 |
葉緑体が過剰光ストレスにさらされると、過剰光量子は活性酸素を生成するように作用する。活性酸素の内、寿命が短く、拡散距離も短い一重項酸素分子(^1O_2)を光照射葉緑体で定量的に測定する方法をこれまでに開発した。赤色光照射下、リアルタイムで葉緑体、チラコイド膜で^1O_2を定量できる蛍光プローブDPAXと、別の蛍光プローブDanePyを用い、^1O_2の光による生成量が酸素のない条件下で5-6倍以上に増加することを発見した。嫌気条件にすると葉緑体、チラコイド膜での^1O_2生成は光照射開始後、数秒以内に直線的に進行した。しかし、光合成電子受容体(ferricyanide)を加えると嫌気条件下でも^1O_2生成は直ちに停止した。嫌気条件下の^1O_2の生成速度は、同じ条件下で測定したFerricyanideを電子受容体とする酸素発生速度の〜1.7%であった。以上の発見は、光化学系IIがUVや光過剰ストレスによって反応中心が損傷を受けて初めて^1O_2が生成するのではなく、正常なチラコイド膜であっても、嫌気条件下では^1O_2が生成することを示している。以上の発見は、酸素によって^1O_2生成が抑制され、^1O_2による光阻害を抑制していることを示している。 以上の他、チラコイド膜脂質が^1O_2によって酸化されて生ずる反応性の高いカルボニル(2-alkenalとoxene)のα、β2重結合を還元する2-alkenal reductaseの大量発現による過剰光ストレス抑制、葉緑体MDA reductaseの精製、アスコルビン酸による循環的電子伝達の維持、C4植物でNDHが循環的電子伝達系によるATP生成に関与,NDHの欠損したタバコは光酸化ストレスを受けやすいこと、なども明らかにした。
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