研究課題
基盤研究(B)
自然環境で太陽光は日変化のみならず、気象変化によっても大きく変動する。太陽光照度(P)が葉緑体のCO_2固定に利用できる能力(A)よりも高い光過剰環境(P>A)で、過剰の光エネルギーは活性酸素を生成しそれによって葉緑体は光阻害をうける。葉緑体は光過剰ストレスに対処するため、P>Aストレスを緩和するシステムによって活性酸素の生成を抑制すると共に、効率の高い活性酸素の消去システムをもたなければならない。本研究では活性酸素の内、測定が困難であった一重項酸素分子(^1O_2)を、葉緑体を光照射しつつ、検出、定量できる方法を開発した。このため、^1O_2に特異的なチラコイド膜に結合できるDPAX,DanePyを蛍光プローブとして用い、蛍光プローブの光分解が少なく、作用光によって影響を受けないパルス変調増幅法によって、リアルタイムで^1O_2を検出、定量できる方法を初めて開発した。この方法によって、チラコイド膜で^1O_2は、従来、考えられていた様に光阻害を受けて初めて生成するのではなく、光阻害を特に受けていなくとも光照射開始後直ちに^1O_2が生成することを明らかにした。さらに、酸素のない条件下では、^1O_2の生成量が数倍以上に増加することを発見した。この酸素による^1O_2生成抑制は、酸素が電子受容体として機能し、^1O_2の生成、^1O_2による光阻害を低下させていることを示している。以上の他に、P>Aストレスの緩和機構として機能している循環的電子伝達系に関与する酵素とアスコルピン酸による反応の維持、活性酸素を消去するwater-waterサイクルの機能、関与する酵素などについても明らかにした。
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