研究概要 |
本年度は星状の配列をした葉緑体と,内部へ細胞質が陥入したピレノイドを持つ褐藻スキトタムヌス目の種のうち,Scytothamnus sp.,Splachnidium sp.を対象にピレノイドの微細構造を調べるとともにルビスコの局在を解析した。その結果,これらのピレノイドの細胞質陥入は葉緑体包膜部分で起こっており,葉緑体ER膜の部分で起こっているとするこれまでに報告とは異なることを明らかにした。この違いはこれまでの研究が通常の固定を行っていたのに対し,本研究では長里千香子博士(日本学術振興会特別研究員)の協力を得て,凍結置換法による構造解析を行ったことによると考えられる。また,Asteronemaでは,複数の葉緑体が集合して星形に見えるが,この際,ピレノイドの一部の葉緑体ER膜の部分で接着が起こることが示された。また,いずれの分類群においても,ほとんどのルビスコ分子はピレノイドに局在していることがルビスコ抗体による観察で示された。これらの結果は同じ褐藻類でも系統的に遠い関係にあるカヤモノリ目の場合と共通している。 Schizocladia同様,褐藻類に近縁な海産の多細胞黄色植物を各地の沿岸から探索した。その結果,いくつかの候補種を得て,電子顕微鏡観察と分子系統学的解析を行うために現在単藻化を行っている。また,Schizocladia ischiensisについて,HPLC法によるカロチノイド類の色素分析を行い,現在近縁種との比較を進めている。
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