研究概要 |
核18SrDNA配列からGiraudyopsis stellifera(クリソメリス目)と近縁と考えられるNZ産多細胞黄色植物につき、培養下での形態、微細構造、光合成色素組成、分子系統学的解析を行った。本種の栄養細胞は粘質からなる細胞壁様構造を有し、成熟すると内部に1個の遊泳細胞を生じる。遊泳細胞は西洋梨形で顕著な眼点を持つ1個の葉緑体と不等長の側生2鞭毛を持つ。遊泳後基物に付着すると、基物に密着する匍匐糸状体に発達し、次いで分枝し柔組織様で高さ約10mmに達する直立細胞糸を発出する。葉緑体はガードルラメラで包まれた3重のチラコイドラメラを持ち、埋没型のピレノイドを有する。HPLC解析では、Chl.a, c、フコキサンチン、ヴィオラキサンチン、ディアトキサンチンなどの存在が確認された。Giraudyopsis属の含まれるクリソメリス目は、その綱レベルの所属が明らかではないが、葉緑体rbcL遺伝子による解析では、黄緑藻綱、褐藻綱、シゾクラディア藻綱、ファエオタムニオン藻綱などと近縁だが、いずれの綱にも属さず、Tetrasporopsis(所属不詳)とクレードを作る。一方ギリシャ産の褐藻Discosporagiumの培養株と豪州産の乾燥標本についてrbcL遺伝子による解析を行った結果,本属はこれまで褐藻で最も祖先的とされていたChoristocarpusと最も近縁であり,褐藻の中で最も早くに分岐することが示された。またギリシャ産と豪州産は遺伝的に顕著に異なり,種レベルで異なる可能性が示された。一方,両種の高次分類についてはSchmidt(1937)がD.mesarthrocarpumに基づきディスコスポランギウム科およびディスコスポランギウム目を提唱しており,命名法上これらの分類群を採用することになると考えられる。
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