トランスゴルジ網、エンドソーム、リソソーム、そして細胞膜などのオルガネラ間を結ぶ蛋白輸送は、AP(adaptor protein)複合体ファミリーとクラスリンから形成される輸送小胞によって行われる。本研究では、神経細胞および上皮細胞という、高等多細胞生物に特徴的であり、かつ高次機能の一端を担う細胞群に限局して発現しているAP複合体ファミリーの機能を、細胞および個体レベルで解析することを目的とした。 ・yeast 2-hybrid法によるμ3B結合分子の同定 μ3Bの全長、及びC末端部分をbaitとして脳由来cDNAライブラリーのスクリーニングを行い、μ3Bに特異的に結合する分子としてCRMPファミリー同定した。 ・μ3A/B積み荷蛋白質候補・ZnT3の輸送制御の解析 ZnトランスポーターであるZnT3は6回膜貫通蛋白質であり、μ3A/Bの積み荷蛋白である可能性がある。そこで、種々のZnT3変異体を作成し、PC12細胞に発現させてその局在を検討した結果、N末端およびC末端の両方に細胞内局在を決定するシグナル配列が存在する可能性が示唆された。 ・変異体を用いたμ1Bの機能解析 LDLRやTfRの側底面シグナルのμ1Bによる認識の分子機構は不明である。そこで一連の変異μ1B遺伝子を作成し、これらを安定発現した上皮細胞株を樹立した。これらの細胞にLDLR、TfRおよびコントロールとしてチロシンモチーフを持つ分子を一過性に発現させ、免疫染色法により細胞膜局在を検討中である。 ・μ1B欠損マウス・細胞の樹立・解析 μ1Bの対立遺伝子のエキソン4-5の両側にloxP配列を挿入した細胞を確立し、これを用いてμ1BKOマウスを樹立した。またこのES細胞を用いて、もう一方の対立遺伝子にも欠失を導入し、μ1B欠損ES細胞を樹立した。ES細胞を浮遊培養すると最外層が上皮細胞に分化したembryoid body(EB)を形成する。μ1B欠損ES細胞のEBは野生型ES細胞のEBに比較して異常に大きくなることから、μ1Bは上皮細胞の形成過程二以上をもたらすことが示唆された。
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