研究概要 |
以下の2つの研究項目を行った。 1.オリゴマー蛋白質の構造とその安定性に関する研究 耐熱性アスパルターゼのX線構造解析を行い,4量体からなるこの酵素の熱安定性について明らかにした。その結果,常温のアスパルターゼの構造と比べて活性部位構成ループの温度安定性がかなり高いことが分かった。また,分子全体にわたってイオン結合が多く存在していることも安定性に寄与していることが明らかになった。一方,7量体蛋白質である大腸菌由来のシャペロニンGroESの高濃度での溶液構造安定性をX線溶液散乱法(SAXS)により詳細に調べた結果,7量体蛋白質は一旦解離し,構造を部分的にとった単量体が中間体として存在していることが明らかになった。GroES蛋白質は変性条件下でアミロイド線維を形成するので,この中間体の存在の確認は意味あるものと考えられた。 2.タンパク質のコンフォメーション変化とアミロイド線維形成に関する研究 上記に記述したように病気とは無関係のオリゴマー蛋白質であるコシャペロニンGroESが典型的なアミロイド線維を形成することを発見した。GroES7量体の構造変化の特長を分子のコンパクトという点からSAXS実験によって調べた結果,オリゴマー構造全体がまず壊れ,その後解離したサブユニットが完全に変性することが明らかになった。アミロイド線維形成能はオリゴマー分子が壊れる領域で高いことが分かった。一方,パーキンソン病と関連したαシヌクレインタンパク質のアミロイド線維形成は,大きく変性した分子がある程度コンパクトになるときに早く形成されることを発見した。これらの実験結果は,アミロイド線維形成と蛋白質の大きな構造変化との関連に対して意義ある示唆を与えるものである。
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