研究概要 |
蛋白質の構造変化によって生じるアミロイド線維の形成機構について分子論的に研究するとともに,アミロイド線維形成に大きく関わる構造形成中間体の制御機構を司る分子シャペロンに関する研究に焦点を絞って研究を行い,以下の成果を得た。 蛋白質アミロド線維形成メカニズムの研究: 病気とは関連性のない7量体蛋白質であるGroESは塩酸グアニジン中でサブユニットが解離し,同時に変性する。この反応中に分布する分子のコンパクトさとアミロイド線維形成の関係を調べたところ,アミロイド線維の核形成反応にはコンパクトな分子種が優位であるが,アミロイド線維の伸張反応には逆に分子は変性して広がった方が有利であることが明らかになった。 一方,パーキンソン病原因蛋白質であるαシヌクレインのアミロイド線維形成機構も分子論的に明らかにし,同種のアミロイド線維核だけではなく,全く異なった蛋白質のアミロイド線維核の添加によってもαシヌクレインはアミロイド線維を早く形成することを証明した。この結果は,アミロイド依存的に発症するコンフォメーション病の伝播という概念に重要な示唆を与える。 シャペロニンの機能発現の研究: シャペロニンGroELはすべての生物に至るまで保存されており,Hsp60として様々な機能を発揮している。今回ゼブラフィッシュの尾ひれの細胞の再生にHsp60が重要な役割を果たしていることを分子論的に明らかにした。一方,細胞質内型シャペロニンはグループII型と呼ばれ,グループI型のGroELとは機能発現の点で異なっている部分が多い。我々はヌクレオチドの加水分解活性がこれまで言われているマグネシウムではなく,コバルトとマンガンに大きく依存して起こることを発見し,その特徴を耐熱性シャペロニンを用いて調べた。その結果,ATPase活性だけでなくADPase活性も有しており,それらに依存してシャペロニン活性を示すことを明らかにした。
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