研究概要 |
蛋白質の大きな構造変化が及ぼす生命機能と病気との関連性について,蛋白質の安定性や分子シャペロンの機能の関わりに焦点をあてて研究を行い,以下の成果を得た。 1.オリゴマー蛋白質の構造とその安定性に関する研究:耐熱性アスパルターゼのX線構造解析を行い,4量体からなるこの酵素の熱安定性機構と活性部位構造について明らかにした。一方,7量体蛋白質である大腸菌由来のシャペロニンGroES(Hsp10)の高濃度での溶液構造安定性をX線溶液散乱法により詳細に調べ,その構造変性機構を明らかにした。 2.蛋白質のコンフォメーション変化とアミロイド線維形成に関する研究:病気とは直接関係していないオリゴマー蛋白質,GroESが典型的なアミロイド線維を形成することを発見し,そのアミロイド線維形成機構について,分子のコンパクトさを指標に明らかにした。一方,パーキンソン病原因蛋白質のαシヌクレインのアミロイド線維形成機構についても同様に調べると共に,アミロイド病の伝播に関連した異種蛋白質アミロイド核によるαシヌクレインのアミロイド線維形成を実験的に証明した。 3.分子シャペロンの構造と機能に関する研究:グループI型大腸菌由来GroELとグループII型シャペロニンの機能発現機構の詳細を調べ,GroELの各ドメインの速度論的な動きの重要性とグループII型シャペロニンの機能発現促進因子を明らかにした。一方,ゼブラフィッシュにおける尾びれの再生に,Hsp60が関与していることを発見し,その温度感受性変異体の解析を行った。
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