研究概要 |
既に我々は、哺乳類Cox17pが細胞内と同じ還元条件下で銅イオン特異的に、1:3のモル比で結合することを見出してきたが、実際にCu-Cox17pがミトコンドリアのシトクロムc酸化酵素(CCO)を活性化するかについては不明であった。そこで、ラットの肝臓から調製したミトコンドリア内膜画分を用いて、in vitroでCCO活性に対する影響を検討したところ、Cu-Cox17pは還元型グルタチオン存在下で有意にCCOを活性化した。更に、Cox17pと共役して銅イオンをCCOに運ぶと考えられている内膜タンパクSco1/2pのGST-融合タンパク質を用いて、ミトコンドリア膜間領域に到達したCu-Cox17pから、最終的に銅イオンがCCOへどの様に伝達されるかを検討した。その結果、(1)Cox17pはin vitroでSco1/2pと結合する事、(2)Sco1/2pはCCOのサブユニットのうち、複核中心CuAを有するCox2pサブユニットと結合する事、(3)更にはCox17p自身も直接Cox2pサブユニットに特異的に結合しうる事、を明らかにした。またこれらの結果に加えて、(4)(1)〜(3)のそれぞれの結合には銅イオンそのものは必要ない事、(5)既に我々及び他のグループで示された、COX17遺伝子破壊マウス及びSCO1,2遺伝子の変異体の表現型が重篤なCCO活性不全をもたらすという事実から、ミトコンドリア内膜上での銅イオンの輸送には、これらの分子同志のタンパク-タンパク間の相互作用が重要である可能性が示された。現在、培養細胞系を用いてin vivoにおける、これらの分子間の相互作用について検討中である。
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