研究課題
スフィンゴシン1-リン酸(S1P)と関連の脂質性シグナル分子はG蛋白連関型の受容体リガンドとして機能する。本研究ではこれら脂質性シグナル分子の動態と機能に関して解析し、以下の結果を得た。(1)S1Pの血管細胞機能として、従来より知られていた血管平滑筋細胞におけるcAMP産生のメカニズムを解析した。その結果、S1PはS1P2受容体/ERK/ホスホリパーゼA2/シクロオキシゲナーゼ2/プロスタグランジン/プロスタグランジン受容体を介してcAMPを産生することを明らかにした。また、血管内皮細胞では、細胞接着分子(VCAM-1、ICAM1)発現に対し、S1Pが単独では促進するが、腫瘍壊死因子による細胞接着分子発現を抑制すること、これらの応答はそれぞれ、S1P3,S1P1の受容体を介しているものと推定された。(2)脂質性シグナル分子の機能を解析している過程で、サイコシンという脂質性シグナル分子の受容体として同定されていたTDAG8が細胞外プロトンすなわちpHを感知して、G蛋白、細胞内シグナル伝達系を活性化することを見いだした。このG蛋白共役型受容体はOGR1ファミリーの一員であると推定される。このプロトン感知性受容体ファミリーの受容応答機構、細胞内シグナル伝達機構、生理機能の解析を行った。その結果、OGR1受容体に対し、スフィンゴシルホスホリルコリン、サイコシンがアンタゴニスト様活性を示すことを見出した。これらのリゾスフィンゴ脂質はTDAG8受容体に対しても同様なアンタゴニスト作用を示すことから、OGR1受容体ファミリーのプロトン感知作用に対して特異的にアンタゴニスト様作用を発揮することが示唆され、今後、プロトン感知性受容体の解析のためのツールとしての使用が期待された。また、血管平滑筋細胞を用い、細胞外pH低下によるプロスタグランジン産生、cAMP産生作用がOGR1受容体を介していることを受容体siRNAなどを用い証明した。このように、プロトン感知性受容体が生理的な細胞でも機能していることが示された。(3)グリオーマ細胞の細胞遊走、浸潤におよぼすリゾ脂質分子の作用を解析した。その結果、リゾホスファチジン酸はLPA1受容体を介し促進性に、一方、S1PはS1P2を介して抑制性に作用することが判った。受容体を介した細胞内シグナル伝達系に関して特に低分子G蛋白の役割を解析した。
すべて 2005
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