細胞増殖因子が受容体に結合すると両者は内在化し初期エンドソームに運ばれる。その後初期エンドソームにおいて選別され細胞表面へはリサイクルされずにリソソームに運ばれ分解される。この選別輸送において、受容体のユビキチン化が選別シグナルとして機能している。本研究では、選別輸送の制御因子の1つであるSTAMに結合するタンパク質として同定された脱ユビキチン化酵素UBPYについて、受容体のユビキチン化レベルにおける役割について解析し、以下の結果を得た。 1.EGF刺激により活性化したEGF受容体(EGFR)のユビキチン化レベルを指標にして解析したところ、UBPYの過剰発現により脱ユビキチン化が見られた。この脱ユビキチン化はUBPYの酵素活性部位を置換した変異体の過剰発現では見られなかった。またSTAMとの結合ができないUBPYの変異体の過剰発現では、野生型UBPYに比べると脱ユビキチン化の程度が落ちていた。さらにUBPYのsiRNAの発現により、EGFRのユビキチン化レベルが上昇した。これらの結果は、UBPYはその酵素活性を介してEGFRの脱ユビキチン化を行い、UBPYが最大の活性を示すためにはSTAMとの結合が必要であることを示している。 2.UBPYの過剰発現では、EGFRの脱ユビキチン化が起こったことから、ユビキチン化をシグナルとする受容体の分解経路への移行がこの脱ユビキチン化により阻害されると考えられる。UBPYの過剰発現によるEGFRの分解レベルについて解析したところ、UBPYの過剰発現によりEGFRの分解が阻害された。また酵素活性部位を置換した変異体の過剰発現では阻害は見られなかった。これらの結果は、UBPYはEGFRのユビキチン化レベルを低下することによりEGFRの選別輸送の制御に重要な役割を果していることを示唆している。
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