研究概要 |
T4ファージテイルリゾチームの構造決定以後、プロセッシングの機構を解明するため、切断部位のSer351を7種類のアミノ酸(Leu, Val, His, Ala, Glu, Lys, Pro)に置換した変異体gp5を構築してプロセッシングを調べた。その結果、野生株では約7割の前駆体がプロセッシングを受けるのに対して、これらの変異体ではAla, His変異体で若干(数%以下)切断が起こる以外は全く切断されないことが分かった。このうち、Ser351Leu変異体の結晶化および構造解析がPurdue大学の金丸周司(平成15年9月より東京工業大学COE助手)によって行われ、野生株では決定することができなかった16残基の立体構造を明らかにすることができた。その結果以下のことが分かった:1)プロセッシング部位(Ser351とSer352の間)は溶媒に露出しており、切断部位は同蛋白質のいずれの領域とも接触していないことが分かった。従って、自己切断の可能性は低い。2)リゾチームドメインの基質認識部位は隣のサブユニットのリゾチームドメインから出ているリンカーペプチドによって占拠され、活性が抑制されている。このペプチドの位置は切断が起こらなくても同一であった。従って、ペプチドによるリゾチーム活性の抑制はプロセッシングの結果ではないことが明らかになった。 他方、T4類縁ファージのゲノム解析が進行しており、配列が決定されたRB49ファージとRB69ファージのgp5を比較してみると、C末端のβヘリックス構造はよく保存されているが、長さは若干異なることが分かった。しかし、さらに類縁関係の離れたSpm2ファージのgp5は400残基も長く、N末端配列はよく保存されているものの、リゾチームドメインやC末端のβヘリックスは類似性が低い。この蛋白質のクローニング・大量発現系の作成に成功した。現在蛋白質の精製を進めている。
|