研究課題
基盤研究(B)
バクテリオロドプシンは高度好塩菌の細胞膜に見出された蛋白質で、光エネルギーを利用してプロトンの能動輸送を行う。7本の膜貫通ヘリックスからなり、発色団としてレチナールを含む。この蛋白質は生物物理学的手法を用いて活発に研究されてきており、構造・機能解析の最も進んだ生体イオンポンプとしても知られる。しかし、プロトン輸送の作動原理の解明には反応中間体の構造解析が不可欠であり、その立体構造を高分解能で求めることが待ち望まれていた。我々は、これまでに、膜融合を利用して膜蛋白質を結晶化することを試み、脂質分子を含んだバクテリオロドプシンの三次元結晶を作成する技術の開発を行ってきた。また、低温X線回折測定法を適用してX線損傷の影響の軽減を図り、水分子を識別できる程度の分解能(2.3オングストローム)の構造解析を実現した。本年度においては、バクテリオロドプシンのL中間体の構造解析を行い、レチナールの13メチル基と接触している残基(Leu93とTrp182)の側鎖が回転ないし平行移動すること、Schiff塩基と水素結合していた水分子が細胞質側に引き釣り上げられ、Leu93の側鎖の回転により生じたマイクロキャビティに移動すること、などを明らかにした。また、バクテリオロドプシン類似蛋白質であるアーキロドプシン-2のX線構造解析を行い、2.4オングストロームの分解能で構造を求めた。バクテリオロドプシンの構造と比較すると、プロトン放出チャネルがより開放的になっていること、などを明らかにした。また、イカ・ロドプシンについても、結晶化に成功し、低分解能ながらもX線回折データを収集した。
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