研究概要 |
シアノバクテリアの時計蛋白質KaiCの機能解析を通じて,生物時計の振動機構を明らかにすることが本研究の中心課題であった。本研究では極めて大きな前進が得られた。それは「概日時計蛋白質KaiCのリン酸化サイクルが時計の中心振動であることを明らかにした」ということである。 従来のあらゆる生物での時計モデルは,時計遺伝子発現のフィードバック制御による振動発生を前提としてきた。しかし,私たちは増殖が抑制され,転写翻訳が劇的に低下する連続暗条件であってもKaiCリン酸化サイクルが概日リズムを示し,温度補償もされていることを発見した。このリズムは転写翻訳の阻害剤を投与しても影響が見られず,転写翻訳フィードバックモデルの常識を始めて覆し,蛋白質ネットワークによる振動モデルを提案することができた(Tomita et al., Science,1995)。 さらに,私たちはin vitroで三つの時計蛋白質KaiA, KaiB, KaiCおよびATPのみでリン酸化サイクトルが持続ことを発見した。これは,世界初の体内時計のin vitro再構成であり,蛋白質化学,非線形科学,応用化学に極めて重要なインパクトを与える画期的な成果であると自負している(Nakajima et al., Science,印刷中)。
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