研究課題
我々はこれまでに、原子間力顕微鏡によるナノスケールイメージング法を用いて「真核生物のゲノム高次構造は、基本的には原核生物のゲノム高次構造と同様な原理で、すなわち、DNAの物理的性質とDNA・タンパク質相互作用のバランスの上に構築される」という作業仮説に至った。本研究計画(平成15-19年)ではゲノムの高次構造構築の更なる一般的原理を明らかにするために、平成16年度までに、(1)大腸菌の核様体関連タンパク質のdps-、fis-、oxyR-、および、ihf-変異株・欠損株におけるゲノム構造を解析し、(2)大腸菌以外の種(Staphylococcus aureusおよびClostridium perfringens)の核様体の構造解析から、そこにも大腸菌ゲノムの基本単位である40nmや80nmのファイバーが存在することを確認した。(3)また、これらの基本単位ファイバーは、種々の酸化ストレス下において、更なる高次構造(凝集構造)をとり、このゲノムの凝集はDps-タンパク質の特異的機能によることも分かった。(4)さらに、真核生物である分裂酵母、ニワトリ赤血球、HeLa-細胞の核内ゲノム構造を解析したところ、40nmや80nmのファイバーの存在を確認した。本年度(平成16年)は、大腸菌において、Dps-依存性のゲノムの凝集にはトポイソメラーゼとDNA-ジャイレースによるゲノムのトポロジー調節が決定的な役割を演じていること、(2)ゲノム基本構造(40nmや80nmのファイバー)はミトコンドリアや葉緑体ゲノムにおいても見られる一般的構造であること、(3)ミトコンドリアや葉緑体、原核生物の40-80nmのファイバー構築には塩基性タンパク質とRNAが重要な役割を果たしているが、真核生物の30nmファイバー構築にはコアヒストン8量体とヒストンH1のみが関与することを示した。以上の結果から、染色体・核様体構築メカニズムの普遍性と特異性とに関するモデルを作成した。
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