研究課題
(1)我々は30nmファイバーや80nmビーズ状ファイバーからなるループ構造といった真核生物の高次クロマチンの生化学的再構成に成功し、これら高次構造を種々の改良型原子間力顕微鏡を含む各種可視化技術用いて可視化・解析した。(2)細胞あるいは細胞から単離してきた核を、基板上で部分的に溶解させ、原子間力顕微鏡観察に供する"In situ Lysis法"を確立した。この方法を、分裂酵母核、ニワトリ赤血球核、HeLa-細胞核に適用し、真核生物の核内ゲノム構造には30nmや80nmビーズ状ファイバーが存在することを明らかにした。(3)また、"In situ Lysis法"を大腸菌、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、クロストリジウム(Clostridium perfringens))に応用し、真正細菌のゲノム高次構造にも、真核生物同様、階層性が存在し、30nmファイバーや80nmビーズ状ループ構造が存在することを示した。30nmや80nmファイバーはミトコンドリアや葉緑体のゲノムにおいても見られる一般的構造であることから、ゲノムの折りたたみ機構には、構成タンパク質は異なれども、普遍的な物理的メカニズムがあることが示唆される。(4)さらに、大腸菌の30nmファイバー構築には塩基性タンパク質とRNAが重要な役割を果たしており、RNAを取り除けば、10mmファイバーが得られるが、真核生物の30nmファイバー構築にはコアヒストン8量体とヒストンH1のみが関与し、RNAは不要である。以上の結果から、染色体・核様体構築メカニズムの普遍性と特異性とに関するモデルを作成した。(5)一方、核内でのより高次な折りたたみに関しては、「核内ゲノムの高次構造は膜やスカフォールド(あるいはマトリクス)と呼ばれる足場との相互作用により保障されている」との認識から、再構成クロマチンと核内構造タンパク質との相互作用を一分子レベルで解析する技術を開発した。ラミンB受容体と再構成クロマチンとの直接結合力を測定した。これにより、今後多くのタンパク質と高次クロマチンとの直接的あるいは間接的相互作用を解析する新たな道が開けた。
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すべて 雑誌論文 (12件)
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