研究課題
基盤研究(B)
すべての細胞は極性化しており、細胞の極性形成は必須な細胞機能である。また、がん細胞では細胞極性が異常となることが知られており、極性形成は発がんの観点からも重要である。一方、細胞膜リン脂質の分子種が脂質2重層の細胞外側と細胞質側で分布濃度を異にすることが知られており、膜脂質の非対称性と呼ばれている。私達は、出芽酵母をモデル系に用いて、細胞極性形成を制御する新しい遺伝子Cdc50を見出し、このCdc50が、膜リン脂質を細胞膜外側から細胞質側へ輸送するアミノリン脂質トランスロケース型ATPase(Drs2)と膜上で複合体を形成していることを明らかにしてきた。私達は今年度、リン脂質非対称性と膜内エルゴステロールが共同してアクチン細胞骨格の極性化を制御していることを明らかにし、論文発表した。さらに本年度は以下の研究成果も得ることができた。(1)DCdc50-Drs2複合体とその類似複合体がエンドサイトーシスのリサイクリング過程を制御していることを明らかにした。さらに、Cdc50-Drs2は細胞内小胞輸送を制御するRab型small GTPaseであるYpt31/32とそのエフェクターであるRcy1の制御を受けている可能性が高いことも明らかにした。(田中、鎌田担当)(2)上述したエンドサイトーシスリサイクリング過程の制御において、Cdc50-Drs2が細胞内小胞の出芽を制御するArf1 small GTPaseと機能的に相互作用していることを明らかにした。また、この際のArf1のエフェクターとして、GGA蛋白質が重要な働きを担っていることも明らかにした。(田中、山本担当)以上の結果から、リン脂質非対称性は、エンドソームからの小胞の出芽過程に関与している可能性が高いと考えられた。このように、本研究において今年度も着実な成果をあげることができた。
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