研究概要 |
本研究は,鞭毛基部体(中心小体)の形成に必須な蛋白質Bld10pの機能を,生化学的,遺伝学的に解析し,中心小体形成の分子機構を明らかにしようとするものである.今年度の進展は以下の通りである. 【bld10 suppressor変異株の解析】 今年度はsuppressor (sup)変異株の遺伝子座と表現型の解析を行った. Sup変異株にはintragenicとextragenic変異の2種があるが,intragenic変異株は,いずれもbld10-2のもつアンバー変異と同じコドンに再度変異を生じたものであった.Extragenic変異については,AFLPを用いた連鎖解析によって遺伝子座をつきとめた.その領域には既存のbld変異などはマップされていないので,この変異遺伝子を同定すれば,基部体形成に働く新しい蛋白質が明らかになると期待される. Extragenic sup変異株の細胞を電子顕微鏡と間接蛍光抗体法によって観察したところ,興味深いことに,細胞体の中に鞭毛軸糸が形成されていることがわかった.これは複製される基部体の方向性などに障害が出るために起こった現象ではないかと推察され,基部体形成初期におけるBld10pの機能を探る上で大きな手がかりとなる. 【Bld10pの生化学的解析】 大腸菌で発現させた組換えBld10蛋白質に試験管内で重合して繊維を形成する性質があることを明らかにした.Bld10pが局在するcartwheelは,9本の細い繊維が放射状に並んだ構造である.この繊維と試験管内で重合した繊維を比較すると,太さはcartwheelが6nmに対してBld10pが10nm,長さは80nmに対して数百nmと多少異なる.しかしBld10pの重合性はcartwheelの形成に大きく寄与していると考えられる.
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