研究概要 |
中心小体(または中心子)は微小管構造の形成に重要な細胞内小器官で,短い三連微小管が9回対称に配置されたユニークな構造をもつ.また,細胞周期ごとに複製されるという不思議な性質ももっている.しかし形成の分子機構についてはほとんど何もわかっていない.本研究は,中心小体と相同な鞭毛基部体をもつクラミドモナスを用いて,中心小体形成の分子機構を探ろうとするものである.具体的には,基部体の形成初期に働くBld10pの機能解析をとおして,中心小体構築の分子機構を明らかにすることが目的である. これまでにBld10pは基部体の底部にあるcartwheelという構造に局在することが明らかとなっている.この構造は9本の細いフィラメントが放射状に並んだもので,基部体の9回対称性が確立される上で重要な役割を担うと推定されている.Bld10pの完全欠失突然変異株bld10は基部体をもたないため,Bld10pが基部体の必須タンパクであることはわかっていたが,その形成過程においてどのように機能するかはわかっていなかった.今年度は,N末端,またはC末端を欠失させたBld10pをコードするcDNAを構築し,これをbld10変異株に導入することによって,Bld10pの機能解析を試みた.その結果,N末端の40%またはC末端の10%程度を欠失しても,この分子の機能にほとんど影響はないことが明らかになった.しかし,N末端の50%またはC末端の20%程度を欠失すると,一部の細胞にしか鞭毛は形成されなくなった.これらの細胞を電子顕微鏡で観察すると,cartwheelの形状はほとんど野生型と変わらないが,cartwheelと三連微小管の結合が一部はずれていることがわかった.従って,Bld10pの機能の少なくとも一部は,この部分を結合させることにあることが判明した.
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