研究概要 |
大腸菌の表層ストレス応答に関わる転写因子(シグマ因子)ο^Eは、通常は一回膜貫通蛋白質RseAの細胞質領域と結合して不活性状態に保たれている。表層ストレスに曝されると、RseAはDegSプロテアーゼによりペリプラズム(非細胞質)領域で分解を受ける。YaeL,は「制御された膜内部での蛋白質切断(RIP)」に関わるS2P proteaseファミリーに属する。我々は、RseAが、DegSに続いてYaeLにより2段階目の切断を受けること、この切断が表層ストレス応答(ο^Eの活性化)に必須であることを見出した。また、YaeLは完全長の(DegSによる切断を受けていない)RseAは切断出来ないが、この抑制には、YaeLのPDZドメインと基質RseAのGln残基に富む領域、両者が重要であることを明らかにした。 RIPは、生物界に広く保存された細胞機能制御機構として注目されているが、その分子機構の理解は進んでいない。我々はin vivoでDegSとは無関係にYaeLにより切断され、その切断を定量的に解析することが出来るモデル基質(HA-MBP-RseA140)を作成した。これを用いてYaeLによる切断について調べた結果、切断にはRseA由来のアミノ酸配列は必須ではないこと、YaeLはRseAの膜貫通領域のみならず本来無関係な膜タンパク質(LacY)由来の膜貫通配列をその内部で切断しうること、膜貫通配列中のhelix-braking residueが切断には重要であること等を見出した。さらに、反転膜小胞中及び精製YaeLを用いた可溶化条件下で基質切断を再現する系を作製した。これらの解析系はYaeLの機能やその制御、さらにはRIPのメカニズムの研究に役立つものと考えている。
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