スピンドルチェックポイントは、すべての動原体に紡錘糸が適切に接続するまで姉妹染色分体の解離を遅延させる。細胞周期が円滑に進行するためには、動原体への紡錘糸の接続完了にともないこのチェックポイントが解除されることが必要である。本研究ではスピンドルチェックポイントの解除因子、p31comet(旧名Cmt2)の機能解析を第一目的とした。本年度は、スピンドルチェックポイントの中枢因子であるMad2は生体内で2種の立体構造(N1とN2)をとりうること、またN2型は試験管系でAPCによる蛋白質のユビキチン化を阻害するが、この試験管系にp31cometを添加するとMad2のAPCに対する阻害作用が相殺されることを示した。また、p31cometは有糸分裂期には紡錘糸、とりわけその先端に好んで局在することを見つけた。すでに紡錘糸先端に局在する蛋白質、EB1と物理的相互作用することも示した。次年度はこの物理的相互作用がスピンドルチェックポイントの解除過程で果たす役割について解明したい。 本研究の第二の目的は、スピンドルチェックポイントに必須なMad1蛋白質の機能ドメインの解析である。本年度はスピンドルチェックポイントの活性化に伴いMad1蛋白質がリン酸化されることを確認した。また、リン酸化部位の候補も同定したので、この部位のアミノ酸を非リン酸化アミノ酸に置換し、その生物学的意義を追求する。
|