研究概要 |
mDia1はN末端に低分子量G蛋白質Rho結合ドメインをもち、Rhoが結合するとそのC末端との結合が外れ、FH1-FH2ユニット構造が活性化し、細胞内に著明なアクチンファイバーを誘導する(Watanabe N.et al.Nat.Cell Biol.,1999)。最近、FH1-FH2ユニットが試験管内でアクチン核化を加速し、アクチン線維の伸長端に結合することが報告された。我々はEGFP-mDia1を単分子スペックル法によって生細胞内で観察したところ、FH1-FH2変異体が、〜数十マイクロンの距離を移動するのを見い出した。その平均速度は毎秒2.0マイクロメーターで、アクチン流動より2桁速い。その移動はNocodazoleで微小管を壊しても影響を受けず、アクチン重合、脱重合を阻害する3種の薬では完全に停止した。更に、アクチン単量体不活化や脱重合阻害では、徐々に速度が減速するが、アクチン線維の伸長端に結合し、伸長を阻害するサイトカラシンを用いると個々のmDia1の分子運動が瞬時に、しかも数秒間にわたって次々にランダムに停止した。この停止様式は3種の薬剤によって引き起こされるであろうアクチン線維の伸長速度の変化と一致する。また、これらの薬剤処理中でもアクチン線維が残存し、アクチン収縮が起きることからミオシンモーターを介した分子移動ではないと考えられる。顕微鏡下で、精製されたアクチン、プロフィリン、mDia1を用い、mDia1が重合をつづけるアクチン伸長端に会合する結果を見い出した。これらのデータは、mDia1は重合するアクチンの反矢じり端にプロセッシヴに結合しながら移動することを示す。今回の発見はモーター蛋白質以外ではじめて長距離を移動できる分子機構が存在することを、しかもそれを生細胞内で直接明らかにした(Science印刷中)。
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