研究概要 |
本研究では、酵母変異株を用いて細胞分裂と細胞増殖(リボソーム生合成)間のクロストークの実態を明らかにし、その分子機構を解明することを目指す。我々は、リボソーム生合成の制御機構を研究する過程で、酵母の細胞増殖における膜輸送系(分泌経路)とリボソーム合成系との間の密接な制御関係を見出した。さらにこの制御に必須な新規蛋白質Rrslp、それと相互作用する蛋白質Ebp2pを同定し、Rrs1pおよびEbp2pがリボソーム生合成に必須であることを示した。一方、ヒトEbp2pはEBウィルスゲノムDNAの分配に関与することが示唆されている。本研究では、Rrs1pとEbp2pの機能解析を通じて細胞増殖と細胞分裂のクロストークの分子機構を解明する。今年度の成果は以下のとおりである。 (1)PCRによりランダムに変異を導入して得た温度感受性rrs1変異株にUV照射し、合成致死変異株を取得した。この原因遺伝子は5S rRNAの成熟に必須なRNaseをコードするREX1であった。Rrs1pがリボソーム蛋白質L11,L5と相互作用することを示し、Rrs1pがL11およびL5-5SrRNA複合体をリボソームサブユニット前駆体ヘリクルートするというモデルを提出した。(発表論文Nucleic Acids Res. 33: 4553-4562) (2)PCRによりランダムに変異を導入し、温度感受性ebp2変異株を取得した。ebp2変異株において、制限温度で核形態の異常が観察された。Ebp2pが核小体以外に核膜周辺にも局在することを見出した。この局在と核形態維持との関連について検討中である。
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