我々は骨密度の低下に伴う骨変形と嚢胞腎を特徴とする変異マウスを作成し、表現型の詳細な解析を行った。その結果、骨芽細胞の分化異常によって骨密度が低下すること、近位尿細管の遠位化や細管の拡張が起こることがわかった。これらはヒトに見られる嚢胞腎や骨粗鬆症の病態をよく反映していることを示していた。さらに我々はリングフィンガーモチーフを持つ原因遺伝子・Makorin1を同定した。Makorin1はベーターカテニンやカドヘリンと結合しWntシグナルのカスケードに位置する遺伝子で、骨細胞の分化、上皮細胞の極性・接着を制御する機能があることを明らかにした。 生物の形づくりの設計図ボディープランの解明によって形態形成遺伝子群からなる「発生システム」ともいうべき発生プログラムが存在していることが明らかとなっている。中でもWntシグナルとその伝達機構は代表的な形態形成遺伝子群であり、体軸の決定、胚葉の組織、パターン形成、器官形成・再生などの諸過程で繰り返し用いられているだけでなく、様々な遺伝疾患や細胞のがん化と深く関連している。特にMakorin1はユビキチネースの機能をもつ新規のカスケードに位置するもので、Wntシグナルを伝達しベーターカテニンやカドヘリンの制御を通して器官の形成と維持に重要であることがわかってきた。 Makorin1のmRNAをアフリカツメガエルの卵に注入した場合二次の軸の形成がみられ、一方モルフォリーノRNAでノックダウンした場合、原腸陥入後に発生が停止することが分かった。これらの事からもMakorin1はWntシグナルのカスケードにおいて重要な役割を果たすことが分かった。
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