研究課題
基盤研究(B)
自然界では、多くの生物は環境に適応して無性生殖、有性生殖を切り換えて子孫を形成している。プラナリアでも自然界では、多くの生物は環境に適応して無性生殖、有性生殖を切り換えて子孫を形成している。しかし、その切り換え機構についてはほとんど知られていない。プラナリアでも環境により、無性生殖と有性生殖を転換する系統が存在する。私達は無性生殖で増殖させたリユウキュウナミウズムシ(Dugesia ryukyuensis)OH株に、イズミオオウズムシ(Bdellocephala brunnea)という有性生殖のみを行うプラナリアを餌として与えることによって、人為的に無性生殖を行う個体から有性生殖を行う個体へと転換させる実験系(有性化)を確立している。有性化は形態的特長からステージ1-5に分類され、有性化がある程度進行すると、投餌を止めても自立的に有性化が進行するようになり(ほぼステージ3)、この時期をPoint of No Returnとよぶ。プラナリアの有性化による無性生殖から有性生殖への転換は、自然界における生殖転換機構のモデルと考えることができる。有性個体を餌として無性個体に与えることにより、有性化が進行することから有性個体中に有性化を促す因子(有性化因子)が含まれていると考えられる。その化学構造が明らかになれば、後生動物における初の生殖戦略転換にかかわる鍵物質の同定となる。本研究では有性化因子の単離・同定を目指してきた。今年度、有性個体ホモジェネートより、逆相、イオン交換そしてゲル濾過クロマトグラフィーを組み合わせた方法によって、有性化因子の精製を行ってきた。この物質の性質は、熱安定性弱疎水性、非蛋白質性で分子量500Da以下の低分子有機化合物であることが明らかとなった。さらにNMR解析およびCD測定により、L-トリプトファンであることがわかった。現在、市販のL-トリプトファン投与による生物検定を行っており、有性化とL-トリプトファンの投与量(濃度)に重要な関係があることが示唆できる予備的な結果が得られている。生物に必須であるアミノ酸のひとつが、プラナリア有性化現象に関与していた驚きとともに、どのような作用機序で生殖器官(生殖細胞)の分化や無性生殖の停止がL-トリプトファンにより誘導されるのかを調査することにより、後生動物に共通する新たな生命現象の発見につながる発展性が期待できる。
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