本研究課題では、イネおよびキンギョソウを材料にメチル化可変領域の解析を行なっている。イネでは、メチル化感受性酵素HpaIIおよびそのイソシゾマーである非感受性酵素MspIで消化したそれぞれのゲノム断片にアダプターを付加し、AFLP(Amplified Fragment Length Polymorphism)を応用した手法、トランスポゾン・ディスプレイ法を用いてゲノム網羅的にメチル化状態を調査した。トランスポゾン・ディスプレイの片側のプライマーには2つのMITE(Miniature Inverted Repeat Transposable elements)、MashuおよびTabitoIIの末端配列を用いた。AFLP、MashaおよびTabitoIIの3つのプライマーではメチル化されているバンドの出現頻度はそれぞれ15〜27%、10〜15%および22〜32%とわずかながら差を生じていた。メチル化状態の比較は、ジャポニカ3系統、インディカ3系統、野生イネ3系統の9系統の間で行い、MspIで生じた同一サイズのバンドがHpaIで同一か否かを調査した。この際HpaIIのみバンドが系統間で異なるメチル化可変断片をepi-markerと名付けた。Epi-markerは縁の近い系統間よりも遠い系統間で多く出現する傾向があった。興味深いことにepi-markerの出現頻度は、全バンド数に対していずれの系統間にでも一定(3〜5%)であった。 キンギョソウについてはトランスポゾンTam3に着目してメチル化の変化を調査した。Tam3はゲノムに50コピー程度在り、温度によって転移活性が抑制でき、メチレーションも温度によって変化する。これらメチル化の可変機構を調査した結果、メチル化の変化するTam3内の配列はTam3の転移酵素が結合するサイトに一致することが判明した。これらのサイトは、低温では転移酵素がTam3に結合し、高温ではメチル化を付与する酵素が結合すると考えられた。
|