ウリ科作物の効率的な組換え体創出のためのスーパーアグロバクテリウムの開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15380002
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 江面 浩 筑波大学, 農林学系, 助教授 (00332552)
• 研究分担者: 南澤 究 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (70167667)
• キーワード: ウリ科 / 遺伝子導入 / アグロバクテリウム / 組替え体 / エチレン / 生合成 / リゾビトキシン / ACCデアミナーゼ

研究概要

本研究では、ウリ科作物の組換え体創出の問題点を解決し、効率的な遺伝子導入技術を開発することを目的に、以下の研究を実施する。即ち、(1)形質転換体選抜方法の改良、(2)スーパーAgrobacteriumの分子育種、(3)スーパーAgrobacteriumの遺伝子導入効率の評価、(4)各種ウリ科作物への遺伝子導入に対する開発技術の汎用性の検証である。平成15年度は、以下の研究成果が得られた。
従来のウリ科作物の不定芽培養系を使った形質転換では選抜個体の中に"エスケープ"が多く含まれることが問題となっている。本年度はメロンの2つのモデル系統(reticulatusとcantalupensis)を用いて液体振とう培養と不定胚培養系を組合せることで"エスケープ"を大幅に減らす組換え体創出法を開発した。さらに、他のモデル系統(inodolus)でも液体振とう培養により不定胚誘導と植物体再生を行うことに初めて成功し、形質転換系確立に取組んでいる。
エチレンがAgrobacteriumの植物への遺伝子導入を抑制する機構に関して詳細な解析を行った結果、菌自体の生育を抑制するのではなく、植物が作るAgrobacteriumの遺伝子導入を促進する物質の生産がエチレンにより抑制され、菌から植物細胞への遺伝子導入過程が抑制されることが示唆された。今後、この遺伝子導入促進物質の解明を行う予定である。
植物のエチレン生合成を阻害するACCデアミナーゼを合成する能力をAgrobacteriumに付与する実験を行った。根粒菌(Mesorhizobium loti)からクローニングしたACCデアミナーゼ遺伝子をAgrobacteriumでの発現ベクターに組込み、得られた形質転換体の中からACCデアミナーゼ合成能力をもった株の選抜を行った。このスーパーAgrobacteriumに植物への遺伝子導入を確認するレポーター遺伝子を導入した。これらの株を次年度の実験に使用する。
また、根粒菌が生産するエチレン生合成阻害剤リゾビトキシンの生合成経路および植物との相互作用機構の一端を解明し、スーパーAgrobacterium作成の学術的な基盤を明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Akasaka-Kenedy, Y, Tomita, K, Ezura, H: "Efficient plant regeneration and Agrobacterium-mediated transformation via somatic embryogenesis in melon (Cucumis melo L.)"Plant Science. 166(3). 763-769 (2004)
• [文献書誌] Okazaki, S., Yuhashi, K., Minamisawa, K.: "Quantitative and time-course evaluation of nodulation competitiveness of rhizobit oxine-producing Bradyrhizobium elkanii"FEMS Microbiol. Ecol.. 45(1). 155-160 (2003)
• [文献書誌] Okazaki, S., Sugawara, M., Minamisawa K.: "Bradyrhizobium elkanii rtxC gene is required for expression of symbiotic phenotypes in the final step of rhizobitoxine biosynthesis"Appl.Environ.Microbiol.. 70(1). 535-541 (2004)
• [文献書誌] Nukui, N., Ezura, H., Minamisawa, K.: "Transgenic Lotus japonicus with an ethylene receptor gene Cm-ERSI/H70A enhances formation of infection treads and nodule primordial"Plant Cell Physiol.. (印刷中). (2004)