研究課題
本研究では、植物-微生物(特に根粒菌)の相互作用を解明し、その知見を利用した遺伝子導入効率の良いスーパーアグロバクテリウムの育種に取組んでいる。エチレンが、植物への遺伝子導入を抑制する仕組みを解析した。その結果、エチレンが植物表面でのアグロバクテリウム接着と増殖を抑制しないこと、vir遺伝子群の発現を抑制すること、植物細胞内での遺伝子輸送を抑制することが明らかになった。アグロバクテリウムにACCデアミナーゼ遺伝子をプラスミドで導入したが、このプラスミドは菌体に保持されなかった。そこで、植物への遺伝子導入用バイナリーベクターと共保持可能なプラスミドpBBR1MCS-5を検索し、このプラスミドによって菌体内でACCデアミナーゼ遺伝子の安定保持が可能になった。ミヤコグサ根粒菌Mesorhizobium lotiのACCデアミナーゼをコードするacdS遺伝子の転写制御を検討した。その結果acdSは感染途上および未熟根粒では発現しておらず、成熟根粒内のみで発現した。acdS上流にはsigma54-UAS領域があり、NifAタンパク質による転写制御が考えられた。そこで本菌の二つのnifA1,nifA2遺伝子を個別に破壊したところ、acdSはnifA2産物のみによりnifHと同様に共生窒素固定特異的な発現制御の下にあった。根粒菌Bradyrhizobium elkaniiのリゾビトキシン生合成遺伝子群内にあるrtxD破壊株(ΔrtxD)は野生株よりリゾビトキシン生産能力が低下していた。しかし、本破壊株にrtxDを相補しても生産能力の回復は認められず、rtxD産物の役割解明に至らなかった。また、イネ白葉枯病菌ゲノムにB.elkaniiと酷似するリゾビトキシン生合成遺伝子が見いだされた。イネ白葉枯病菌は、今後のリゾビトキシン生合成系遺伝子の解明と付与の研究材料として期待された。
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