研究概要 |
GR1はイネの必須元素であるケイ酸を積極的に吸収しない世界で初めての突然変異系統である.また,その特性は短因子劣性遺伝子に起因する.一方,飼料用イネの特性として,籾殻及び植物体のケイ酸が少ないことが求められている.そこで,本課題では低ケイ酸含量突然変異系統GR1の飼料用イネとしての利用の可能性について検討する. 本年度は,低ケイ酸突然変異系統GR1とその野生型オオチカラを供試し,いもち病抵抗性,圃場抵抗性,ウンカ抵抗性,リグニン含量,乾物消失率及び可消化養分総量等を比較し,飼料用イネとしての有用性を検討した.得られた結果の概要は次のとおりである. 1)いもち病抵抗性及び圃場抵抗性:GR1のケイ酸含量はオオチカラに比べ,1/3前後であるが,病斑数には有意な差はなく,また幼植物にケイ酸を投与しても病斑数には影響が見られなかった.葉齢が進むにしたがって圃場抵抗性の指標とした病斑面積率は強くなるが,系統間の差はいずれの葉齢においても認められなかった. 2)ウンカ抵抗性:GR1はウンカ類の増殖にとって好適でないと思われますが,これはGR1の抵抗性に起因するのではなく,GR1茎葉の褐変化に伴う二次的影響と考えられます. 3)リグニン含量:GR1のリグニン含量はいずれの器官においてもオオチカラより有意に高かった. 4)乾物消失率:茎葉及び子実の乾物消失率における系統間差は認められず,ケイ酸含有率の差が乾物消失率に影響していないようであった. 5)飼料評価:TDN含量等における系統間差は認められなかった. GR1のケイ酸含量は野生型オオチカラより顕著に低く,またリグニン含量は有意に高いにも拘らず,GR1のいもち病耐病性や乾物消失率,TDN含量等がオオチカラと同程度であったことはたいへん興味深く,さらに検討を加える必要がある.ケイ酸含量及びリグニン含量と耐病性や消化性との関係に新たな知見が期待できる.
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