研究概要 |
イネ品種オオチカラのアジ化ナトリウム処理により低ケイ酸突然変異系統(GR1)を誘発した.分子マーカーを用いた遺伝マッピングによる,GR1の低ケイ酸含有量は第2染色体長腕に位置する劣性単一遺伝子(Lsi)に支配されることが明らかになった. 圃揚で慣行法に従って栽培したオオチカラおよびGR1の成熟期における植物体の各種成分を器官別に分析した.その結果,GR1のケイ酸含量(%)は原品種の11〜43%に低下していることがわかった.しかし,GR1ではリグニン含量がオオチカラの約1.2〜1.4倍に増加しており,ケイ酸含量の低下による植物体の強度の低下をリグニン含量の増加によって補償している可能性が示唆された. 幼苗におけるいもち病抵抗性を調査したところ,GR1は原品種オオチカラよりもいもち病斑が多いことが明らかになった.さらに,圃場栽培した材料をもちい,セジロウンカならびにコブノメイガの被害をみたところ,コブノメイガの食害を受けた葉の枚数がGR1において有意に多いことが明らかになった. 圃場で栽培したときの乾物収量はオオチカラが1068kg/10aであったのに対し,GR1の乾物収量は1090kg/10aで,両者の間に有意差は認められなかった. ホールクロップサイレージを調整し,飼料としての化学成分ならびに牛に給餌したときの消化率を調査した.GR1突然変異体のケイ酸含有率はオオチカラの約1/7に減少していたにも拘わらず,消化特性においては原品種オオチカラとの間に顕著な差異は認められなかった.この原因として,GR1において消化が困難なリグニン含量が増加していたことが考えられる. ケイ酸の吸収機構を調査するための材料として,イネの根に関する突然変態を多数選抜し,特性解析を行った.ケイ酸は主に測根から吸収され,根毛はほとんどケイ酸の吸収に寄与しないことが明らかになった.
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