研究概要 |
昨年確認したリポキシゲナーゼ(Lox)活性が低下した新丹波黒とタマホマレの交雑F_1をガラス温室にて養成し,F_2種子を採種した。F_2種子114粒の酵素活性はほぼ両親の活性範囲に分布し,新丹波黒と同程度の活性を示す低活性種子を認めた。Lox-3のプロモーター領域の変異を利用してLox-3欠失型検出用と野生型検出用として使える2組のDNAマーカーを開発した。また,Lox-2欠失については構造遺伝子の1596番目の塩基の変異を利用して、Lox-2欠失型の検出用DNAマーカーを開発した。 豆腐の風味に及ぼすLox活性の影響を調べるために,生しぼりと加熱しぼり豆腐の官能評価及び呈味・香気成分の比較分析を行った。生しぼり豆腐は加熱しぼり豆腐よりもこく味、甘味が有意に強く感じられた。豆腐の甘味成分である遊離糖、不快味成分であるイソフラボンの各量は両豆腐間で差がなかったが,香気成分のhexanoic acidは生しぼり豆腐で有意に多く存在していた。Lox活性作用によって生成するhexanoic acidは豆腐特有のこく味(風味)に寄与する主要な成分であり、甘味も増強する可能性が示唆された。 豆腐の風味に関与する揮発性、および不揮発性化合物の生成機構について調査した。揮発性化合物では,国内1,000品種について揮発成分組成分析を行い,Lox全欠大豆でも顕著に生成する1-octen-3-ol生成量が低い品種を数種見いだした。一方、不揮発性成分については豆腐の風味に密接に関係する脂質過酸化物に注目した。その中で、Lox活性作用によって生成するa,b-不飽和カルボニル構造を有するケト脂肪酸がグリセロ脂質の状態で生成されることを見いだした。 今後は,Lox活性が低下した大豆及び新たに見いだされた変異大豆を用いた呈味性改変の可能性について検討する必要がある。
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