研究概要 |
リポキシゲナーゼ(L1,L2,L3)活性は、寒冷地生産の品種が,暖地生産の品種の比べ高い傾向を示した。新丹波黒のpH9でのリポキシゲナーゼ活性(L1)が低い形質は遺伝的支配によることを示した。欠失変異の塩基配列を利用してマーカーの開発を行った。L3のプロモーター領域の変異を利用してL3欠失型検出用と野生型検出用として使える2組のDNAマーカーを開発した。また,L2欠失型の判別は構造遺伝子のSNPを用いてDNAマーカーを開発した。 普通品種スズユタカ(L123)、ゆめゆたか(L1)、関東102(L2)、九州119(L3)、いちひめ(全欠)の破砕に伴うオキシリピン代謝について検討した。どの品種でも酸化脂質は遊離脂肪酸画分よりグリセロ脂質画分に多く見いだされた。生成した酸化脂質量は関東102で最も多く、ゆめゆたかといちひめで最も低かった。 生しぼり豆腐は加熱しぼり豆腐よりもこく味、甘味が有意に強く感じられた。香気成分のhexanoic acidは生しぼり豆腐で有意に多く存在していた。Lox活性作用によって生成するhexanoic acidは豆腐特有のこく味(風味)に寄与する主要な成分であり甘味も増強することが示唆された。大豆を高温・高湿条件下で保存すると、hexanal、hexanoic acid、maltolの生成量が増加することが認められ、豆腐の味質に影響することが示唆された。 以上の結果から、リポキシゲナーゼ反応由来の脂質酸化生成物が豆腐のこく味、甘味に寄与する成分であり、本酵素活性を制御することにより豆腐の味質を多様化できることを示した。今後、リポキシゲナーゼ欠失品種と普通品種とのブレンドや部分欠失性を利用した応用研究が必要であろう。
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