研究課題/領域番号 |
15380014
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
飯嶋 盛雄 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (60252277)
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研究分担者 |
森田 茂紀 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00143404)
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キーワード | 境界細胞 / 原生動物 / 国際研究者交流 / 根冠 / 土壌の機械的ストレス / 粘液分泌 / Border cell / 連合王国:ドイツ |
研究概要 |
本研究は、根圏土壌中における境界複合体の生態的な意義を多面的に解明することを目的とする。今年度は、土壌動物と境界複合体の相互関係を定量的に検討した。海外共同研究者のボンコースキーは、原生動物が存在することによって、植物根の成長が促進されるという最新の研究成果を提出している。本研究では、この現象を食用作物種でも検証するとともに、仮により多くの境界複合体が放出されれば、原生動物の活動が活発になり、成長促進がより高まるという仮説をたてた。境界複合体の放出量を制御しながら、根の生理や土壌環境を一定の条件にすることは容易ではないため、異なる生態型のイネ品種を供試し、境界複合体の放出量が異なる品種間での原生動物に対する反応性を比較することによって、仮説の傍証を得ることを目指した。陸稲、水稲、インディカ、ジャポニカの生態型から23品種を選び、根冠粘液量を水耕栽培条件下で求めた。その中で、粘液量が顕著に異なる10品種を選び、その境界細胞放出量を調べるとともに、原生動物が存在する土壌と存在しない土壌で2週間成育させ乾物生産と根系発達を精査した。その結果、原生動物の存在下で半数にあたる5つの供試品種で側根成長が有意に促進するとともに、粘液量の最も大きな2品種では、総根長と地上部乾物重についても有意な成長促進を認めた。さらに原生動物による総根長の成長促進と、粘液量および境界細胞数との間には正の相関関係を認めた。また、購入した紫外線可視分光光度計により、養分吸収の指標として土壌の窒素吸収量についても検討を加えた。以上の結果から、原生動物の存在下で食用作物種でも成長促進が起こることを確認するとともに、この成長促進程度には境界複合体の放出量が関与することを示唆した。また、共同研究者の森田、バーローとともに境界複合体ならびに根冠の形態と機能に関する総説を執筆するための準備を行った。
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