研究概要 |
フダンソウのベタイン合成に重要な働きを持つコリンモノオキシゲナーゼ(CMO)、ホスホエタノールアミンN-メチルトランスフェラーゼ(PEAMT)、S-アデノシルメチオニンシンセターゼ(SAMS)遺伝子のプロモータ部位をTAIL-PCR法により単離し、塩基配列を決定した。これらの遺伝子の塩ストレス応答に関わるシスエレメントを決定するためにアグロインフィルタレーション法を試みたが、この方法ではシスエレメントの決定ができなかった。しかしこの研究の副産物として、フダンソウではCMO、PEAMT、SAMS遺伝子のみならずメチオニンシンセターゼ、S-アデノシルホモシステインハイドラーゼの遺伝子も塩処理時、日周期でCMOなどと連動してmRNA発現連動が起こることを発見した。 上記の研究の過程で植物の多くのPEAMT遺伝子の5'UTR領域にはupstream open reading frame(uORF)が存在することを発見した。植物ではuORFに関する研究はあまり行われていないが、多くの場合では下流のORFの翻訳制御に関わることが知られている。アラビドプシスの培養細胞で、このPEAMT遺伝子の5'UTR配列を付加したGUS遺伝子を発現させ、その培養細胞に様々な処理を行うことで、このuORFはどのような機能を持つのかを調査した。その結果、このuORFは倍地上にコリンが存在するときに、下流のORFの翻訳を阻害する機能を有することが認められた。PEAMT遺伝子はコリンの合成に関わるため、細胞内で過剰のコリンを合成しないためにこのようなuORFをPEAMT遺伝子は持つと考えられる。シロイヌナズナにおいて、傷害ストレス時に作動するMAPキナーゼカスケード(AtMEKK1-AtMEK1-ATMPK4)を同定した。このカスケードの最初の段階であるAtMEKK1がどのようにストレス応答的に活性化するのかを検討した。まず、本酵素の調節領域はC-末端領域に存在すると考え,その領域の除去を試み常時活性化能を有する変異体(AtMEKK1Δ166)を作成し,酵母のツーハイブリッド法,免疫沈降法により,シロイヌナズナからクローニングした9種のMEK遺伝子から,AtMEK1が強くリン酸化されることを明らかにした。また,非ストレス下においてはAtMEKK1とAtMEK1分子との結合性が検出されないのに反して、傷害ストレス後、瞬時に二つの分子が相互結合することを示し,AtMEKK1-AtMEK1シグナル経路が、傷害ストレス時にのみ作動していることと考察した。
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