研究概要 |
果樹や果菜の分子レベルでの解析を行うためのモデル作物として適切なマイクロトムを用いて、ファンクショナルゲノミクスを行うことを目的として、品質や耐病性に関する解析を行った。本年度は、トマトの成長や果実形成および果実品質に関わる遺伝子を導入し、得られた個体の表現型の解析、および当該遺伝子の発現レベルと表現型との相関の検討などを行った。それによって、各遺伝子の果実品質形成における機能を明らかにすることを目的とした。 材料にはモデル園芸作物としての`マイクロトム'と、従来アグロバクテリウム法による形質転換によく用いられてきた`Alisa Craig'を用いた.また比較検討を行うために、バラ科果樹も用いた。品質関連遺伝子の導入を行うためのプロモーターには構成的に発現するカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターと果実特異的に発現する2A11プロモーターを用いた。形質転換にはアグロバクテリウム法を用い、カナマイシン耐性を指標に選抜を行った。 果実細胞において糖などの物質集積にかかわる液胞プロトンポンプである、プロトンATPaseとプロトンピロフォスファターゼ遺伝子をマイクロトムに導入し、その機能を解析した。プロトンATPaseの発現をアンチセンス遺伝子で抑制したところ、果実の発達が抑制され,糖組成も変化した。したがって、プロトンATPaseは果実における物質集積とそれに伴う肥大成長において重要な役割を担っていることが明らかとなった。プロトンピロフォスファターゼについては過剰発現によって果実の早期肥大がみられたことから、果実の肥大成長への関与が示された。その他、環境ストレス耐性に関わる遺伝子や耐病性にかかわる遺伝子に関する解析も行った。
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