研究概要 |
本年度の研究成果として以下の2点を得た. 1.家庭から出る生ごみ・堆肥・農産物を介した物質循環システムを対象とし,農家・非農家がシステムに協力する条件や理由を,意向調査によって解明した.具体的には,物質循環システムが構築された状態を仮定したうえで,システムへの協力行動として「生ごみ分別」「生ごみ運搬」「堆肥化」「堆肥運搬」「堆肥利用」「堆肥利用野菜の売買」を設定し,各々への協力の可否,および協力する条件や理由を,農家へのヒアリングと非農家へのアンケートにより明らかにした.その結果,物質循環システムが農家・非農家間で直接的な関わりが持てるようなものであることが,両者がシステムに協力する条件や理由となっていることが示唆された. 2.小規模物質循環システムを成立させる社会システムを解明するために,その先進例として,フィリピン・マニラ首都圏でのKabuhayan Sa Gulayan Urban Agriculture Programという都市農業振興事業を対象に,生ゴミと野菜を仲立ちとした小規模物質循環の現状を解明した.フィリピンの最小行政単位であるバランガイ単位で,家庭から排出される生ゴミを回収,堆肥化し,その堆肥を野菜栽培に利用していることが明らかとなった.バランガイ単位で物質循環ができた理由には,バランガイの人口が数百から千人程度と小規模であるために各住民が顔見知りであり信頼関係を築けること,バランガイの政府が行政権司法権立法権を有していることから住民をシステムに動員しやすいこと,が考えられた.
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