ビワ果実(品種;富房)の生長を縦径、横径あるいは果重の経時的変化で示すと、いずれの場合でも典型的なS字型生長曲線を示した。すなわち、5月下旬までは緩やかに生長し、その後6月中旬までは急激に生長するが、それ以降は再び緩やかな生長に転じた。 ビワの未熟種子を4月下旬から成熟期まで約1週間間隔で採取し、常法でジベレリン(GAs)、サイトカイニン(Cyt)、オーキシン(IAA)およびアブシジン酸(ABA)を抽出・精製し、常法で定量した。GAs含量は着果期に高く、果実の生長に伴い減少した。Cyt含量は急速な果実の生長に先立って急増し、その後は急減した。しかし、IAAおよびABA含量は、GAsやCyt含量とは逆に果実の生長に伴って増加する傾向が見られ、IAA含量は果実の生長が盛んな時期に高くなり、収穫期には急減した。ところが、ABA含量は果実の生長と平行して増加し、収穫期に最も高くなった。 果実の着果に関係が深いと考えられているGAsを、ビワ未熟種子から抽出・精製し、HPLCで分離後、強いGAs活性が認められたフラクション(Fr)を、開花前に除雄した小花(子房)に一定量を処理した結果、Fr-16、17、19、21および22で単為結果が誘起された。特に、Fr-19および21処理で30〜40%の着果が認められた。さらに、合成サイトカイニンであるCPPUをこれらのFrに添加処理すると、着果率が40〜60%に上昇した。 以上の結果から、GAsとCytはビワの着果に、CytとIAAは果実の生長に、ABAは果実の成熟に関連していると推察された。また、ビワの未熟種子中には数種のGAsが存在し、その一部のGAsが着果(単為結果)に関連していることが明らかになった。
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