三倍体ビワを利用した無種子果生産用品種育成のための育種素材となる四倍体ビワの作出を、アミプロフォスメチル(APM)およびコルヒチンを用いて試みた。1)‘楠'の実生の新梢長が3〜10cmに達した先端部に対する0.005%-APMの14日間浸漬処理および0.2%コルヒチンの14日間浸漬処理と2%コルヒチンの4日間浸漬処理、2)‘富房'成木の発芽・伸長期の新梢先端部に対する0.005%-APMの14日間浸漬処理、3)‘楠'の実生の幼根(長さ3〜4cm)に対する0.005%-APMの14日間浸漬処理、4)2週間MS培地で馴化培養した‘楠'成木の新梢茎頂組織を0.005%-APMを含むMS培地に移植し、7日間培養した結果、各処理区から四倍体が1個体づつ得られた。結局、AMP処理により4個体、コルヒチン処理により2個体、計6個体の四倍体を獲得した。 次に、得られた四倍体と二倍体との交雑から三倍体獲得を試みた。四倍体と二倍体の交雑による結実率は約60%で、さらに三倍体の発現率は94〜100%と高く、正逆交雑間での差異は認められなかった。なお、倍数性は、酵素解離を用いた押しつぶし法およびフローサイトメータで確認した。この結果、多くの三倍体ビワが獲得された。倍数性による生理・形態的違いを比較した結果、三倍体は、気孔長径、気孔密度、がく直径、花粉直径で、四倍体では、葉身幅、葉厚、気孔長径、気孔短径、気孔密度、がく直径、花粉直径、花弁長、花弁幅が二倍体よりも優っていた。また、花房着生率は倍数性に関係なく、いずれも70%以上を示したが、花粉の発芽率は二倍体と四倍体は約95%と高かったが、三倍体では約8%と極めて低かった。このため三倍体の結実率は0.13%でほとんど着果しなかった。しかし、200ppm-GA_3と20ppm-CPPUの混用処理を2回行うことにより、二倍体以上の大きな無種子果実が得られた。
|