研究概要 |
ビワ未熟種子中に存在する植物ホルモンの種類や含量は、果実の生育時期によって著しく異なっていることが判明した。そこで、その働きを明らかにするため、外生的にGA_3(1,000ppm)、CPPU(20ppm)、NAA(100ppm)、ABA(1,000)およびエセフォン(300ppm)を二倍体‘田中'の着色開始期に処理し、果実の肥大、成熟および品質に及ぼす影響を調査した。その結果、果実の肥大はGA_3とCPPU処理区で、糖含量はエセフォン>CPPU>GA_3の順位高く、これらにより成熟が促進されていることが明らかとなった。一方、NAA処理は、著しく糖含量が低く、逆に酸含量が高かったことから、NAAは成熟を抑制していると考えられた。なお、これらの処理による糖組成の変化は認められなかった。 次に、三倍体田中系に500ppm-GA_3+20ppm-CPPUを処理し、二倍体‘田中'(有種子果)と果実品質を比較した結果、果重は前者でやや小さく、糖度が著しく低くなった。また、二倍体‘田中'や‘長崎早生'に同様な処理をし、無種子化しても著しく糖度が減少した。 そこで、ビワ22品種(二倍体)を成熟期に採取し、糖組成について検討した。その結果、ビワ果実中の主要な糖は、グルコース(Glu.)、フルクトース(Fru.)、スクロース(Suc.)およびソルビトール(Sor.)であった。総糖含量は品種により著しく異なり、‘シャンパン'の8.6%から‘麗月'の15%まで認められた。ただし、ソルビトールは光合成産物の転流形態であることから含量はいずれの品種でも極めて少なく、またグルコース含量はいずれの品種でもほぼ一定であった。しかし、品種によって蓄積される糖の割合が異なり、Fru.蓄積型、Fru.とGlu.等量蓄積型、Fru.とSuC.等量蓄積型、Suc.蓄積型に区別された。 以上の結果は、内生植物ホルモンは果実の肥大や成熟のみならず糖蓄積に関係していることが明らかにされた。
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