本研究では、三倍体ビワを用いた商品価値の高い無種子果実生産技術の確立を目指し、三倍体品種の作出、果実の生長や成熟に関連する内生植物ホルモンの動向、GA_3とCPPUの混用処理および内生ジベレリンを用いた無種子化などについて調査し、以下のような成果を得た。 (1)ビワの種子中にはジベレリン(GAs)、サイトカイニン(Cyt)、インドール酢酸(IAA)およびアブシジン酸(ABA)が存在し、GAsは着果期に、Cytは果実の急速な肥大前に、IAAは果実肥大期に、ABAは成熟期に活性レベルが最も高くなった。 (2)ビワの未熟種子から抽出・精製したGAsを小花や幼果に処理すると無種子果が得られ、GA_3処理よりも低濃度でも着果および果実肥大が優っていた。 (3)三倍体作出用の母本として、コルヒチンやアミプロフォスメチル処理により、四倍体が6個体得られた。さらに、それら四倍体と二倍体を交雑し多くの三倍体を獲得した。 (4)ビワの倍数性の違いによる形態および結実特性を比較した結果、倍数性が高くなるほど、葉の大きさと厚さ、気孔の大きさ、花器の大きさ、花弁の大きさおよび花粉粒の直径などの量的形質が増加した。また、二倍体と四倍体では、花粉の発芽率および結実率が高かったものの、三倍体では極めて低かった。 (5)三倍体ビワでは、GA_3とCPPUの混用液を開花前の花らいに対し1回目の処理をし、開花約60日後の幼果に2回目の処理をすると高い割合で無種子果が得られた。得られた無種子果実は二倍体有種子果実より大きくなったが、糖の蓄積、特にスクロースの蓄積が劣っていた。 (6)以上の結果から、二倍体果実を無種子化した場合、無種子果率が低く、果実も小さかったが、三倍体を利用することにより商品価値の高い無種子果実生産が可能となった。今後は、高糖度無種子果実生産に適した三倍体新品種の選抜が急がれる。
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