平成14年度末に導入した脳血流計によって異なる色彩の植物を見たときの脳血流の動態を解析した。具体的には、花の色が赤、黄、紫、白のパンジーと、花の咲いていない葉だけのパンジー(緑色)を見たときの脳血流(前頭部14チャンネル、後頭部24チャンネル)を反復計測し、同じ対象を見たときの脳波(前頭部から後頭部の12チャンネル)、SD法による印象評価、感情プロフィールテストなどの結果と比較した。緑と赤では頭頂葉、後頭葉で脳血流が減少する被験者が多く見られ、また白では後頭葉で減少する被験者が多くみられた。一方、紫では前頭葉と頭頂葉で脳血流が増加する被験音が多かった。緑の植物を見たときに後頭葉が不活発であることは既往の脳波研究(金・藤井、1995;藤井、1996)で報告しており、今回の脳血流の結果はそれと一致する。しかし、頭頂葉でも減少したことと、赤と同様の反応を示したことは新たな結果である。SD法や感情プロフィールテストでは、紫と赤では好感度が低く、ネガティブな感情状態であったのに対して、白、黄、緑では好感度が高く、ポジティブな感情状態にあった。今回対象とした紫と赤のパンジーの花は、赤みを帯びた低明度色であり、一方、白、黄色、緑はそれらに比べて明度が高い。低明度の色彩が高明度に比べて好感度が低くネガティブな感情状態になったことは既往の研究と同様である。これらの主観評価ではほとんどの被験者で同様の結果になったが、脳血流や脳波では上述した傾向とは異なる傾向を示す被験者もあり、脳血流や脳波と、主観評価との対応関係についてはさらに分析が必要であり、次年度の課題とする。
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