研究課題
植物の生理・心理的効果の成立過程を明らかにするため植物を見たときの脳血液動態の特性を実験的に解析した。生垣とブロック塀、それらの面積比率が5:2、4:3、2:5となる場合の5つの対象を視野一杯に広がる形で提示し、それらを見たときの脳血液動態を近赤外分光分析法(NIRS)により右脳47チャンネルで測定した。また、それらに対する印象をSD法で評価した。18名の男性被験者全体で、植物の割合が半分以上の対象において前頭部で沈静化する傾向が見られた。視覚野のある後頭部の脳血流量をもとにクラスター分析により被験者をグループ化した結果、Aグループは植物の割合が多いほど脳活動は沈静化する傾向にあり、一方Bグループは植物の割合が半分以上の対象において後頭部で活性化する傾向が見られた。印象評価ではA、Bともに植物の割合が多い対象でよい評価となった。したがって、Aは植物が多く見えるほど気分が落ち着く集団であり、一方Bは植物の割合が半分以上で視覚処理が活発になる集団と推定された。つまり、脳血流動態の解析によって植物を見たときの生理・心理的反応の発生に2つのプロセスがあると推定された。人工的環境によるストレス増加のなかで不必要な視覚刺激は減少・緩和する必要がある。しかし、刺激的な視覚対象を植物で遮蔽しては対象物の本来の目的を損なう場合も多い。このような場合の配植技法であるカモフラージュ植栽の効果を実証するため、男女7名ずつ計14名の被験者の眼球運動と印象評価によって解析した。カモフラージュ対象とした消化器格納庫を人工壁面の前に置いた場合、停留点の6割が格納庫に向けられたが、そこに背景植栽と添景植栽のいずれを配置しても格納庫への停留点は2割前後に減少し植物への視点停留が約5割になるとともに、印象も有意に向上した。したがって、目障りな対象物を遮蔽せずに、植物を周辺に配置することによって印象を大きく改善できることが実証できた。
すべて 2006
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Int. Congress of Horticulture in Soeul, Korea (CD)
Agricultural Science and Technology 41
ページ: 49-60