研究課題
基盤研究(B)
植物の生理・心理的効果の成立過程を明らかにするため植物を見たときの印象評価と脳血液動態の関係を実験的に解析した。印象評価では植物の割合が多い対象でよい評価となったが、脳血液動態では植物が多いほど脳活動が沈静化するグループと、後頭部で活性化するグループとに二分された。前者は、植物が多く見えるほど気分が落ち着く集団であり、一方後者は植物が多くなると視覚処埋が活発になる集団と推定された。校庭が芝生化された学校と地面の学校で児童の動植物に対する意識や運動の実態を比較した結果、芝生化された学校では児童の動植物に対する関心が高く、また運動では接地活動が特徴的で柔軟性を育むと同時に植物との多面的な触れ合いがみられた。また、市民による里山管理と参加者の意識・行動の関係を調べた結果、里山活動による継続的観察と能動的関わりによって環境認識に深まりがみられた。上記の植物に対する人の基本的反応と植物との関わりの程度による認識・行動の変化の文化的累積結果とも云える植栽構成と視覚心理的効果の関係の比較文化的実験として、対植に対する日本人と韓国人の評価と眼球運動を比較した。その結果、対植が一般的な韓国人では同種同形の対植を好み、視点停留も2本の樹木上に集中するのに対して、伝統的植栽で対植を避ける日本人では異なる形状の樹木からなる対植を韓国人より相対的により好み、視点停留も二本の樹木の中間にも分布するという極めて特徴的な結果となった。したがって、植栽の視覚心理的効果は人に共通する反応と、植物との関わり方や文化によって異なる反応とに区分できるものと考察された。この実験結果と日韓の植栽構成の違いに関わるこれまでの研究をもとに、韓国の植栽構成の特徴とその心理的背景を論じた。また、さらに中国や欧米諸国の植栽構成との比較から、日本の植栽構成の特徴とその心理的背景を論じた。
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