研究概要 |
1.師管液の糖濃度と果実糖濃度との関係について これまでの実験では、果実あたりの葉の枚数を5枚まで増加させたところ、それに比例して果実糖濃度が増加した。そこでこの実験では、葉の枚数をさらに増加させて、師部液糖濃度と果実糖濃度との相関をさらに高濃度の師部液濃度について調べた。第2果房に1果実を残し他の果実は取り除き、葉の枚数を1,5,7,11枚とした。その結果、師管液糖濃度は、葉5枚以上で有意な差は見られず、7.3-8%の範囲にあり、1枚の場合は3.4%まで減少した。果実糖濃度にも、葉5枚以上では有意な差は見られなかった。師管液糖濃度と果実糖濃度とを散布図にプロットすると、師管液糖濃度7%までは果実糖濃度との間に相関がみられたが、7%を越えるとはっきりとした相関は見られなくなった。したがって,師管液スクロース濃度が7%の付近で果実糖濃度の調節が働いていることが示唆された. 2.師管液糖濃度の変化が果実における遺伝子発現に与える影響について 第2果房に1果実を残し、他の果実は取り除き、開花14日後に葉の枚数を0または8枚となるよう摘葉した。1週間後に果実を採取して、RNAを抽出してトマト果実のマイクロアレイに対してハイブリダイゼーションを行った。葉が8枚の場合、果実では細胞伸展に関するエクステンシン、キシログルカンエンドトランスフェラーゼ(XET)などの発現が強く、一方葉が0枚の場合には、デンプン代謝に関わるグルコアミラーゼやスクロースリン酸合成酵素、老化・成熟に関わるACCオキシダーゼ、ポリガラクツロナーゼ、スパーオキシドジスムターゼ(SOD)などの発現が高かった。糖の供給が低下した場合には、細胞成長が抑制されるとともに、貯蔵炭水化物の再利用が進み、老化・成熟がすすむことが示唆された。
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