研究課題
本研究は各種酢ミカン類の多数の交配組合せから得た10年生雑種実生群を用いて雄性不稔の遺伝解明とRAPDマーカーによる雄性不稔雑種の早期選抜に力点を置いたものである。この3年間に行ったこれらの研究とその成果の概要は以下の通りである。雄性不稔は、1.独立の3遺伝子ms_1 ms_2 ms_3に支配され、劣性ホモで発現すること、2.3遺伝子間に相互作用があり、ms_1とms_2は補足遺伝子、ms_3は優性上位の遺伝子であること、3.驚くべきことに、交配に用いたほとんど(12品種)の遺伝子型はヘテロであること、4.スダチの細胞質には稔性回復因子R^+があること、が分った。ウンシュウミカンの細胞質と関連して見られる葯退化は酢ミカン類の雄性不稔雑種群には出現しなかった。これらの雑種個体の中で、ユズ、ハナユ、カボスおよびスダチの自家および他家交雑実生に、低頻度(約1%)ではあるが、幼樹開花実生が出現した。さらに、ユズの戻し交配やグレープフルーツとの交配で高頻度(それぞれ6%と16%)に幼樹開花性雑種実生群を分離する単胚性雄性不稔雑種HY-16(ハナユ×ユズ)を発見し、予測通りに稔性:不稔性がそれぞれ5:3と1:1に分離することを証明した。以上の結果を基に、主要酢ミカン12種類の雄性不稔遺伝子型を決定した。雄性不稔雑種実生と雄性稔性雑種実生をそれぞれ10個体ずつバルクとして、約100のランダムプライマーを用いて、RAPD分析を進めた結果、HY16×フォスターピンクグレープフルーツのF1雑種実生群で雄性不稔と密接に関連(組換価6.3%)するRAPDマーカー(プライマーCMN-A10)を見出した。雄性不稔葯の発達過程の細胞・組織学的調査の結果、胞原期に退化が始まる個体と減数分裂期前後にタペート細胞の退化が始まる個体があり、前者は小型の葯、後者は中型の葯となること、小型の不稔葯形成はms_2、中型の不稔葯形成はms_1が支配することが示唆された。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (1件)
Journal of Faculty of Agriculture, Kyushu University 50・2
ページ: 615-624