研究概要 |
タバコBY-2培養細胞由来脱液胞化プロトプラスト抽出液(BYL)は高い翻訳活性を有し、ToMV RNAの翻訳と複製をサポートできる。しかし、CMV RNAの複製効率はBYLのロットにより大きく変動する。昨年度、BYLでCMV RNAを試験管内翻訳後、粗精製した液胞膜を添加するとToMV, CMVともに複製効率の上昇がみられることがわかった。この結果は、ToMV, CMVともに、複製複合体の一部は液胞膜上に形成されることと一致するものであった。そこで、本年度は、液胞膜によってCMV RNAの試験管内複製が亢進されることを明確に示すため、液胞膜をより高度に精製することを試みた。これまでは、浮遊密度によって膜の分画を行っていたが、ここでは、異なる原理(電荷)に基づき分画・精製を行うフリーフロー電気泳動法を用いた。バッファーを変えるなどして種々の電気泳動条件を試したが、液胞膜を小胞体と完全に分離することはできなかった。現状を総合すると、純度の高い液胞膜を得るためには、フリーフロー電気泳動法よりむしろ、BY-2プロトプラストをパーコール密度勾配中で遠心して液胞に富む小胞を得、その破砕液を蔗糖あるいはイオディキサノール密度勾配遠心にかけ、浮遊密度の小さな液胞膜を分取する方法が優れていると考えられる。液胞は内腔に多量のタンパク質あるいは核酸分解酵素を含む。このため、液胞膜画分からこれらの酵素を完全に排除することは困難である。そこで来年度はCMV RNAの翻訳を膜の存在しない状態で行い、あとから液胞膜を添加することにより効率のよいCMV RNA複製系を構築し、解析を進める。
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